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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)3390号 判決

原告

横山ヒデ

原告

大串タツ

原告

井上フミ

原告

市山ヒロ

原告

小関昭子

原告

守谷廣一

原告

藤原武子

原告

丹野茂二

原告

末次純子

原告

渡部千鶴子

原告

相原まき子

原告

守谷彰男

原告

田代恵美子

原告

鈴木清助

原告

斉藤勲

原告

金子幸

原告

木村和子

右一七名訴訟代理人弁護士

伊沢英造

被告

財団法人斉藤茂吉記念館

右代表者理事

鈴木啓蔵

右訴訟代理人弁護士

大原誠三郎

小田切登

被告

三井信託銀行株式会社

右代表者代表取締役

野上三男

右訴訟代理人弁護士

高野康彦

主文

一  原告市山ヒロの訴えを却下する。

二  その余の原告らの請求を棄却する。

三  訴訟費用中原告市山ヒロに関して生じた部分は原告訴訟代理人の負担とし、その余はその余の原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  東京法務局所属公証人牛尾守三が昭和五八年六月七日作成した昭和五八年第六五〇号遺言公正証書は無効であることを確認する。

2  被告財団法人斉藤茂吉記念館は別紙物件目録記載の不動産につき東京法務局港出張所昭和六〇年一一月一五日受付第三六三〇七号をもつてした所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  東京法務局所属公証人牛尾守三は、昭和五八年六月七日、原告らの被相続人である亡守谷誠二郎(昭和六〇年一〇月一一日死亡)から嘱託されたとして、遺言公正証書(昭和五八年第六五〇号)を作成した。

2  右遺言公正証書の内容は、遺言執行者として被告三井信託銀行株式会社(以下「被告銀行」という。)を指定し、遺言者の全財産を被告財団法人斉藤茂吉記念館(以下「被告記念館」という。)に遺贈するというものであつた。

3  被告記念館は、遺言者の死亡後、前記遺言公正証書に基づき、遺言者の主たる財産である別紙物件目録記載の不動産につき、東京法務局港出張所昭和六〇年一一月一五日受付第三六三〇七号をもつて所有権移転登記を経由した。

4  しかし、右遺言公正証書は、民法九六九条四号に違反して、二人以上の証人の署名押印なしに行なわれ、また、本件遺言書は被告銀行があらかじめ作成した書面に関係者が署名又は記名押印したものであるから同条一、二号に違反し、無効である。

よつて、原告らは本件遺言公正証書の無効確認と所有権移転登記の抹消登記手続を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3の事実は認める。

4  同4の事実は否認する。

三  抗弁

本件遺言公正証書には、証人青葉芳樹、同高橋照美が証人として署名押印したものであり、公証人は遺言者の遺言の口述の趣旨を筆記し作成したものであるから、民法九六九条一、二、四号の要件を具備している。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実は争う。

第三  証拠〈省略〉

理由

一本件記録添付の上申書によれば原告市山ヒロは訴訟委任をしたことがなく、記録添付の訴訟委任状には原告鈴木清助が記名押印したことが認められ、補正命令によつても訴訟代理権の授権の補正がないから、原告市山ヒロの本件訴えは不適法として却下を免れない。

二〈証拠〉によれば抗弁事実が認められる。〈証拠〉には遺言公正証書記載の青葉芳樹、高橋照美の筆跡は同一人物の筆跡である旨記載されているが、前掲各証拠と対比しにわかに採用できず、他に右認定を動かすに足りる証拠はない。

右認定の事実によれば、本件遺言公正証書は適法に作成されたものであつて有効であるといわなければならない。

三よつて、原告市山ヒロの訴えを却下し、その余の原告らの請求を棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九三条、九八条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官村重慶一)

別紙物件目録

一 東京都港区南青山三丁目四三五番宅地 四三〇・八〇平方メートル

二 同番地所在

家屋番号 四三五番一

居宅倉庫 鉄筋コンクリート造陸屋根三階建

一階 一二八・一六平方メートル

二階 一二八・一六平方メートル

三階 八七・八四平方メートル

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